開催にあたってのご挨拶

第60回日本交通科学学会・学術講演会
会長 松田 礼
(日本大学理工学部 精密機械工学科 教授)

 この度,第60回日本交通科学学会学術講演会を日本大学理工学部の駿河台キャンパスで開催させていただくことになりました。このような貴重な機会を与えていただきました日本交通科学学会の皆様に心より感謝申し上げます。

 近年,自動運転,ドライバーモニタリング,運転支援などの自動車技術は急速な進化を遂げています。自動運転技術はセンサとアルゴリズムを活用して車両の自律的な制御を可能にし,さらなる交通事故の削減や交通流の最適化など,交通システム全体を向上させる可能性を秘めています。また,ドライバーモニタリング技術は生体情報を検知する様々なバイタルセンサによって運転者の身体状態を推定し,疲労や注意力の低下を検出することで事故リスクを軽減する手段として注目を集めています。さらに,車線維持支援,車間距離制御,自動ブレーキなどの運転支援技術は車両の周囲の状況や道路情報を収集して運転者に提供することで運転者の操作を補完し,安全性と快適性を向上させています。これらの自動車技術の進化は,これからの交通システムを予示するものであり,より安全で持続可能な移動手段を実現するための重要な一歩であると考えられます。

 自動車技術は日々進化していますが,自動車技術だけでは交通安全に関する多くの問題を解決することはできません。そこで,第60回日本交通科学学会学術講演会のテーマは,『交通安全のための多職種協働と運転支援』としました。交通科学は自動車をはじめとする交通に関する諸問題を科学的に研究する学際的な分野です。また,交通科学は自動車技術の発展だけでなく,医療の専門家と連携して交通事故の予防や安全性を高めるための課題に貢献しなければなりません。さらに,技術革新と行政の枠組みとの調和がこれからの交通システムの構築において不可欠です。そのため,交通科学を扱う本学術講演会では,医療,工学,行政などの多岐にわたる多職種の専門家が連携,協働し,より安全で安心な交通環境の実現に向けて新たな解決策を模索する場にできるよう努めてまいります。

 最後になりますが,学術講演会の開催にあたっては,皆様方のご協力とご支援が欠かせません。皆様方におかれましては,本学術講演会への積極的なご参加と有意義な議論・交流を促進していただきますようお願いします。皆様と共に充実した学術講演会を築き上げ,新たな知見と洞察を得る喜びを共有できることを楽しみにしております。皆様のご参加を心よりお待ちしております。